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Ⅰ 毎朝のカンファランス
筆者は,東京近郊の衛星都市の大学附属第二病院で,主任教授として,つまりメイン・ホスピタルの精神科講座とは独立に,精神科講座を主宰している(獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科,以下「当科」)。精神科専門医制度指導医を,筆者を含め4名擁し,基幹施設として独自の精神科専門医研修プログラムを持っている。精神科入院病床はなく,したがって,卒後教育のフィールドは外来とリエゾン(病棟からの精神科診察依頼への応召)が中心となる(井原,2013, 2017, 2020)。
当科で行われているカンファランスは,「週に1回集まって,1例をじっくり掘り下げる」というものではない。むしろ,毎日,複数例を取り上げて議論する。当科は「薬に頼らない精神科」を謳っており,話題のほとんどは精神療法に関するものになる。
毎日カンファランスを行う理由は,週に1回,月に1回などの頻度で,1ないし少数例を詳細に論じるカンファランスでは,精神科医としての成長にとって不十分と考えているからである。そもそもそのような低頻度では,カンファランスが形骸化する。症例といっても,数日前,数週間前,数カ月前に来て,次に受診するのも随分先になるような,およそリアリティのない患者であろう。指導する側も,参加者も,緊張感を欠いて,対岸の火事を見物するような,弛緩した議論になりがちである。症例提示者の側からしても,指導者,参加者からのコメントを活かしたくても,次の面談がはるか先なので,患者に会う頃にはその気が失せている。
当科のカンファランスでは,「毎朝30分かけて,その日に受診する患者から4,5名を選び,とりあえず『今日の外来診察をしのぐ』ことを目的に議論する」との方針を採っている。後期研修医(現・専攻医)が一人しかおらず,担当患者も少なかったころは,当日受診予定の研修医担当症例については悉皆的にカンファランスにあげていたが,医師数・患者数のふえた今は無理である。しかし,診療日であれば,一日の例外もなく,カンファランスを行っている。時間は8時30分から9時までで,実際には外来診療が始まる9時に間に合わせるために,8時56分ごろには終了するのが常である。

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