特集 精神療法における治癒とは
ユング派心理療法と治癒のイメージ
豊田 園子
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1豊田分析プラクシス
pp.657-661
発行日 2024年10月5日
Published Date 2024/10/5
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「心理療法の最高の目的は患者をありえない幸福状態に移そうとすることではなく,彼に苦しみに耐えられる強さと哲学的忍耐を可能にさせることである」(Jung, 1946)とJungは述べている。ユング心理学をよりどころとして心理療法をやってきた者として,改めて治癒ということについて考えてみたい。
現代ではこころの問題は複雑化し,それに呼応するように数々の新しい心理(精神)療法が開発されてきた。それらが多くの悩める人々に手を差し伸べることになっているのは間違いがない。時代のスピード化とともに,早く効果を求める風潮も否めないだろう。そんな中で,時間も費用もかかるような深層心理学的な治療は敬遠されるのも了解できるところである。中でもユング派の心理療法は,何をやっているのか分かりにくいという点では,時代に逆行するようなイメージもあり,時にはどこかうさんくさい感じに思われるかもしれない。それでも,細々とでもそれが存続するとすれば,それは人々のどのようなニーズに応えるものになっているのだろうか。
Jungは,自分の影響を受けた人々がユング派と名乗ることを嫌った。個々人がそれぞれの在り方を見出すことに意味があると考えたからである。それゆえユング派は一人ひとり違うとも言え,ここで述べることも筆者個人の見方である。

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