連載 知っておきたいこと ア・ラ・カルト
新しい鎮咳薬 ─ゲーファピキサント
新実 彰男
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1大阪府済生会介護老人保健施設ライフポート茨木,大阪府済生会茨木病院呼吸器内科
キーワード:
新しい鎮咳薬 ─ゲーファピキサント
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新しい鎮咳薬 ─ゲーファピキサント
pp.1444-1446
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.09_035
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開発の臨床的背景
咳は患者の受診動機となる症状として最も頻度が高い.8週以上持続し胸部単純X線の異常を伴う肺癌,肺炎などが除外された慢性咳嗽chronic cough(CC)の原因疾患は,わが国では咳喘息,胃食道逆流症,副鼻腔気管支症候群などが多い.原因疾患の適切な治療にても改善不十分な治療抵抗例refractory CC(RCC)と少数の原因不明例unexplained CC(UCC)を合わせた難治性慢性咳嗽(R/UCC)患者は,専門外来では20%を占める1).咳によるQOL低下に加え,肋骨骨折・尿失禁・咳失神などの咳の合併症も問題となる.近年,このような難治例の病態を説明する咳過敏症症候群cough hypersensitivity syndrome(CHS)の概念が提唱された1).従来の中枢性鎮咳薬は中枢レベルで咳を抑え込むため,生理的な咳をも抑制し,誤嚥のリスクや喀痰の排出困難をもたらす.効果も限定的で,便秘や眠気など副作用も多いため,可能な限り使用すべきでない1).以上の背景から,CHSの病態解明と病態特異的治療薬の開発が精力的に進められる中で,最も期待されているのが選択的P2X3受容体拮抗薬であり,先行薬のゲーファピキサント(リフヌア®45mg錠1日2回)が「難治性の慢性咳嗽」を適応症として世界に先駆けて日本で承認・発売された2).

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