Clinical Report 筋ジストロフィー症例報告
空路で大阪から沖縄へ移動し,胸骨U字状切除術を施行したDMDの1例
齊藤 利雄
1
1国立病院機構大阪刀根山医療センター小児神経内科 部長
pp.26-29
発行日 2022年3月10日
Published Date 2022/3/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0119.02.01_0026-0029
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筋ジストロフィーの慢性呼吸不全に対する人工呼吸療法は,筋ジストロフィー患者の生命予後を劇的に改善した.現在,慢性呼吸不全に対しては,非侵襲的人工呼吸療法(non-invasive ventilation:NIV)が第一選択となっているが,NIVで対応できない例に対しては,気管切開による人工呼吸療法が行われる1).気管切開による人工呼吸療法は十分な換気を得ることができる有効な治療法であるが,合併症にも十分留意する必要がある.なかでも,気管腕頭動脈瘻は一旦起こってしまうと致死的であり,発症回避が最も重要である1)2).2006年,われわれは気管腕頭動脈瘻発症予防のため,胸骨U字状切除術を施行したデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)症例を初めて経験した.胸骨U字状切除術は腕頭動脈前面に位置する胸骨頭をU字状に削り,腕頭動脈による気管の圧迫を解除することで,気管腕頭動脈瘻を予防するために行われる手術である3)4).本症例は,慢性呼吸不全のため終日NIVを行っていたが,代償困難となり,当院で気管切開術を行った.当時,胸骨U字状切除術は国立病院機構沖縄病院でしか行われておらず,われわれは空路で患者を大阪から沖縄に搬送し,患者は沖縄病院で外科手術を受けた.
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