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伝統的に,新生児の痛みに対する介入は,成人や年長児と同様には取り扱われてこなかった。なぜなら,痛みは常に主観的であり,患者の訴えに基づくからである。集中治療を必要とする新生児は,不快感を表出することはできても読み取ることが難しく,十分な鎮痛を受ける機会を与えられてこなかったといってもよい。さらには,新生児,とりわけ早産児では痛みを自己鎮静する能力を持ち合わせておらず,事前に準備(プレパレーションなど)することもできない。両親の力添えにより痛みが緩和する根拠があるにもかかわらず,赤ちゃんを擁護する立場にある両親は,痛みを伴う処置を行う間,新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)の外で待機するようにいわれてきた。このように,以前は新生児期の痛みに対してはほとんど認識も治療もされていなかった1)。しかしながら,動物実験やヒトでの研究により,新生児期の痛みは短期的にも長期的にも合併症につながることが報告されてきた。さらには超早産児が生存するようになり,彼らは痛みやストレスによって膨大な回数を曝露されるため2),その影響は重要視されるに至った。最近では,自閉症スペクトラム障害や発達障害的行動異常との関係性も指摘されている3)4)。わが国では文化習慣的な理由からか,新生児の痛みに対する配慮は欧米に比較して遅れてきた。しかし,2014年12月には「NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン」が発刊され,新生児の痛みに関する考え方の指針が示された。しかしながら最近の調査によれば,十分に普及しているとは言い難い状況が続いている。特に医師と看護師の痛みに対する意識の違いが普及を阻害する因子になっている可能性が指摘されている。赤ちゃんの痛み緩和の実践には,ご家族も含めた多職種協働が必須である。特にご家族は「赤ちゃんがなるべく痛くないように処置をする」という目標と責任を共有した,対等で尊敬できるパートナーであるべきであろう。この意味からも,協働のリーダー的役割を担う医師の痛みに対する認識を,看護師に近いレベルまで引き上げることは喫緊の課題であると考えられている。本稿では①薬物を使わない介入,②ショ糖,③局所麻酔を使った介入,④全身投与薬物を使った介入に関して解説する。これらの介入は,表1に示すような信頼性と妥当性が検証されている「痛みの測定ツール」を用いて,できるだけ客観的に評価しながら選択することが肝要である。「KEY WORDS」新生児,鎮痛,痛み緩和,ショ糖
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