特集 ここまで進んだ産婦人科関連の予防医学
腫瘍 遺伝性乳癌卵巣癌に対するリスク低減効果 リスク低減乳房切除術
中井 克也
1
,
齊藤 光江
1順天堂大学 医学部乳腺腫瘍学講座
キーワード:
乳房形成術
,
BRCA1遺伝子
,
乳房インプラント
,
リンパ腫-未分化大細胞
,
BRCA2遺伝子
,
遺伝性乳癌卵巣癌症候群
,
予防的乳房切除術
Keyword:
Genes, BRCA1
,
Prophylactic Mastectomy
,
Mammaplasty
,
Lymphoma, Large-Cell, Anaplastic
,
Breast Implants
,
Genes, BRCA2
,
Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome
pp.811-815
発行日 2022年8月1日
Published Date 2022/8/1
DOI https://doi.org/10.34433/J00525.2022250753
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BRCA病的バリアントを有する乳がん患者に対して、対側リスク低減乳房切除術(CRRM)が2020年4月に保険適応となり、乳がん領域においてもリスク低減切除が一般診療の中で実施できるようになった。CRRMが対側乳房の乳がん発症リスクを低減させることは確実といえるが、生存率の改善効果に関しては、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)等の交絡因子の影響を受けた可能性がある報告が多く不確実性が指摘されている。一方で乳がん未発症のBRCA病的バリアント保持者に対して両側リスク低減乳房切除(BRRM)は、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの既発症者に限り遺伝性乳癌卵巣癌の診療を保険診療として実施が可能になったが、これらを発症していない場合は依然として自費診療の中で行う必要がある。BRRMに関しても乳がん発症リスクは低減させるが、生存率に関しては不確実性が指摘されている。乳がんは卵巣がんと異なりサーベイランスが機能することより、リスク低減乳房切除の意思決定はより慎重に適応を考慮する必要があるといえる。価値観の多様性に配慮し、本人、家族および医療者の協働的意思決定が非常に重要となり、遺伝カウンセラーのもとでリスク低減乳房切除は行う必要がある。
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