FORUM 天才の精神分析――病跡学(パトグラフィ)への誘い・14
エゴン・シーレ
-――その駆け抜けた人生とミューズたち
伊集院 清一
1
1多摩美術大学大学院美術研究科美術学部
pp.824-827
発行日 2021年2月20日
Published Date 2021/2/20
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27608824
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1890年6月12日,ヴィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)の死の年に生まれたエゴン・シーレ(Egon Schiele)は,19世紀末のウィーンを駆け抜け,栄華を誇ったオーストリア=ハンガリー帝国の崩壊とともに1918年,その28年の生涯を閉じた.彼は幾度かの精神的危機に瀕するが,その度にある種の象徴化された絵を描きながら,その前後での作風・スタイルの変化を確立して,成長と発展を遂げていった作家だといえる.グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の跡を継ぐ者としての地位を確立した年にスペイン風邪に罹り,家族と時を同じくして世を去った.折しも第一次世界大戦が終結を迎え,「クンストハレ(芸術の広間)」を形成し,新しい20世紀のウィーンを先導し形づくることを夢みていた時であった.
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