特集 むずかしくない血管炎
Editor's eye
斉藤 隆三
pp.463-463
発行日 2020年6月1日
Published Date 2020/6/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002040
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
血管壁を炎症の場とする血管炎は,全身の臓器に病変を生じる全身性の血管炎と皮膚のみに病変をきたす皮膚限局性の血管炎がある.それらは,Chapel Hill Consensus Conferenceの血管炎分類にみるように,罹患血管の大きさにより疾患が分類されている.皮膚の血管炎では皮膚限局性の場合と全身性の血管炎の皮膚病変があり,皮膚症状のみならず,全身臓器病変の有無の検索を加えて疾患の全体をみる必要がある.そして,血管炎の確定診断には病理組織学的に血管炎の存在を証明することが必要であり,皮膚では検体採取を容易に行えることから,皮膚病変がある場合にはそこから血管炎の診断を確定することが可能となる.本号の表題を「むずかしくない血管炎」としたのは,皮膚科領域では皮膚病変の存在から,血管炎の診断にたどり着くことが比較的容易となるため,むずかしく考え過ぎないようにしてもらいたいとの考え方からだ.しかし,感染症,薬剤,膠原病,悪性腫瘍などその背景は多彩で,原因が不明なことも多い.また,治療には炎症を抑えることのみではなく,血行障害に伴った症状を改善させることが必要で,ことに全身性血管炎では臓器病変の程度によってはしばしば治療に難渋し,予後不良となる,やっかいな疾患である.
皮膚症状は紅斑,丘疹,紫斑,結節,潰瘍,livedo症状,壊死,壊疽など罹患血管の大きさにより多彩な病変を示し,時間的経過により新旧さまざまな症状が混在してみられる.診断を確定するために病理組織検査を行う場合には,可能であれば,症状の異なる病変部から複数の生検を行うことにより,血管炎の診断の確証を得るようにしたい.
Copyright © 2020, KYOWA KIKAKU Ltd. All rights reserved.