特集 「低侵襲治療」小児への適応と可能性
乳び胸 リピオドールリンパ管造影
藤井 隆成
1
Takanari Fujii
1
1昭和大学病院小児循環器・成人先天性心疾患センター
pp.769-773
発行日 2022年8月25日
Published Date 2022/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000205
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Ⅰ.小児における乳び胸
乳び胸はリンパ路の形態的,機能的な障害によりリンパ液が胸腔内に貯留した状態であり,乳び腹水・心囊水,リンパ浮腫,蛋白漏出性胃腸症,鋳型気管支炎などを含むリンパ障害の一形態である。栄養管理(経静脈栄養,低脂肪食,絶食),オクトレオチド,ステロイド,β遮断薬などの保存的治療が行われるが,特に排液量が多い場合には,しばしば治療に抵抗性となる。呼吸障害を呈するのみならず,低栄養や免疫不全をきたし,ドレーンの長期留置や入院期間延長だけでなく,致死的な転機をとる場合があるため,早期の診断と治療介入が必要である。古典的には,①先天性,②外傷性,③中心静脈圧上昇性,④腫瘍性などに分類されてきた1)。先天性には先天性リンパ管形態異常とDown症候群,Noonan症候群,Turner症候群に代表される遺伝子・染色体異常によるものが含まれる1)。臨床的に比較的多く遭遇するものは心臓手術や食道・横隔膜などの胸部の外科手術後に生じるもので,心臓手術後の数%~5%程度に生じる1~3)。これらは上記の分類では外傷性に分類されてきたが,近年,造影MR lymphangiographyを用いた検討で,心臓手術後に生じる乳び胸のうち機械的損傷によるものはごく一部にすぎず,重症例の半数以上はpulmonary lymphatic perfusion syndrome(PLPS)やcentral lymphatic flow disorder(CLFD)といった疾患概念で扱われるリンパ管の形態的,機能的障害が原因となっていることが示されてきている2,3)。
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