特集 AIとともに育つ医療─小児医療の新しいかたち
総論(Overview)
AIが再編する小児医療の関係性─医師・保護者・子ども,そしてAI技術
江間 有沙
1
Arisa Ema
1
1東京大学国際高等研究所東京カレッジ
pp.255-258
発行日 2026年3月1日
Published Date 2026/3/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002884
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はじめに─小児医療の「四角関係」と構造的脆弱性
医療は本質的に,情報と判断能力の非対称性を内包する。患者は医師の説明を受け,理解し,同意することで自己決定を行うが自らの身体についてもっとも詳しい知識をもつのは患者本人ではなく,専門教育を受けた医師であるという構造をもつ。小児医療においては,この構造がさらに複雑になる。子どもは発達途上にあり,医学的情報を十分に理解し,自らの治療について主体的に判断することが難しい。そのため,法的な同意権(インフォームド・コンセント)は保護者が担い,子ども本人の意思は賛意(アセント)として考慮されるにとどまる。ここには通常,「医師─保護者─子ども」という三角関係が成立する。この関係性において,子どもは「自分のことであるにもかかわらず自分で決定できない」「自分の身体についてもっとも知っているのは自分ではない」という二重の制約を受ける。小児医療とは,こうした制約を前提に,子どもの最善の利益を守ることが求められる領域である。

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