- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
早産児,特に極低出生体重児や消化管疾患・心疾患があるハイリスク新生児にとって経腸栄養の第一選択は児の母親の母乳(mother’s own milk:MOM)である。十分な支援によっても母親のなかには十分なMOMが得られない,または何らかの理由でMOMを使用できない場合もある。このような場合に,日本小児科学会は,認可された母乳バンクで管理され,パスツライゼーション(低温殺菌)されたドナーミルク(donor human milk:DHM)を与えるように推奨している1)。わが国の新生児集中治療室(NICU)では,MOMが得られない場合,“もらい母乳”を利用する施設も散見されたが,徐々に減ってきている2)。“もらい乳”の欠点は,提供者の搾乳時の状況(喫煙・アルコール・服薬など)が不明であったり,熱処理を加えていないため細菌やウイルス感染のリスクがあることである。実際に“もらい乳”によるESBL産生大腸菌のアウトブレイク報告もある3)。母乳バンクで広く使われている低温殺菌処理は,holder pasteurization(HoP:62.5℃,30分間の低温長時間熱処理)で乳製品の保存期間を延長させるために一般的に用いられている方法である。低温殺菌処理された母乳は白血球やマクロファージが死滅し,分泌型IgA(sIgA)抗体やラクトフェリンなどの生理活性物質も減少している。そのため,新鮮母乳と比べて多少効果は劣るが,細菌の増殖を抑制する効果は認められている4)。低温殺菌処理の効果を担保するとともに生理活性物質の減少を最小限に抑えるためには,低温殺菌器のクオリティコントロールも重要であり,低温殺菌処理に用いる機器には以下の条件(図)が求められる。また,1年に一度この条件をクリアしていることを確認しなければならない4)。実際には,低温殺菌処理中の温度変化はすべて記録されており,万が一感染源としてDHMが疑われる場合には,低温殺菌処理中の温度変化,ドナーのスクリーニング検査結果はすぐに確認できる体制ができている。わが国では,実際に児に与えられたDHMと同じものも20年以上冷凍保管するようにしている。

© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.

