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はじめに
血液透析患者は末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)を合併する頻度が高く,有病率は新規透析導入患者では導入期に24.3%,維持透析患者では37.2%である1,2)。重症下肢虚血(critical limb ischemia:CLI)はPADの安静時疼痛または潰瘍・壊死を伴う重症型であり,予後も非常に悪く,血行再建を行わない場合の1年生存率は44%と報告されている3)。CLIの病変部位は腸骨動脈,大腿膝窩動脈,膝窩動脈以下のすべてが関与するが,主に責任病変となるのは膝窩動脈以下である4)。CLIの治療として血管内治療(endovascular treatment:EVT)など血流改善を目的とした治療が行われるが,血行再建が不可能か失敗した症例では,薬物療法のみでは6カ月以内に40%が下肢切断に至り,約20%が死亡する5)。そこで,CLI患者に対する新たな治療戦略としてアフェレシス療法の1つである吸着型血液浄化器「レオカーナ」(Rheocarna,株式会社カネカ)が2021年に発売され,現在は血行再建術不適応な潰瘍を有する閉塞性動脈硬化症患者に対して保険適用となっている。吸着型血液浄化器は血流に影響を及ぼす低比重リポ蛋白(low density lipoprotein:LDL)コレステロール(LDL)とフィブリノーゲンを選択的に吸着除去する6)。これによって微小循環障害が改善され,潰瘍の改善が促進される6,7)。LDLとフィブリノーゲンの除去作用のほか,ブラジキニンや一酸化窒素産生を介した血管拡張作用,血管内皮増殖因子の産生増加作用,抗炎症作用などが報告されている8)が,LDLと同様に動脈硬化を進行させるレムナント様リポ蛋白(remnant-like particle:RLP)コレステロール(RLP)やアポリポ蛋白B(apolipoprotein B:Apo B),あるいは動脈硬化進行抑制作用のある高比重リポ蛋白(high density lipoprotein:HDL)コレステロールなどの推移を追った報告は,筆者らが調べる限りではまだない。本症例は右第5趾切断後も形成外科通院中だが,右第5趾断端の壊疽と,右第4趾基節骨・中足骨,右第5中足骨遠位部に骨髄炎を認め,外科的治療前に血流促進と創傷治癒促進を目指して吸着型血液浄化を合計12回施行した。1回目,5回目と10回目の吸着型血液浄化前後での脂質プロファイルを測定した。類似したほか2症例の結果と比較する。
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