特集 骨髄学 ~造血ニッチ研究から見えてきた形態学から分子基盤まで~
4.造血幹細胞・前駆細胞を維持する骨髄の微小環境(ニッチ)
長澤丘司
1
Takashi Nagasawa
1
1京都大学 再生医科学研究所 生体システム制御学分野 教授
pp.335-345
発行日 2015年2月28日
Published Date 2015/2/28
DOI https://doi.org/10.20837/5201503043
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成体の骨髄は,すべての血液細胞が造血幹細胞より産生される場であり,造血幹細胞は,ニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境によって維持されている。2003年に骨内膜の骨芽細胞の一種が造血幹細胞ニッチを構成するという骨内膜ニッチ説が提唱され,広く受け入れられたが,骨内膜ニッチが重要であるという根拠は十分でないことがわかってきた。その一方で,血管内皮細胞(血管ニッチ説)や,CXCL12とSCFを高発現し長い突起を持つ骨芽細胞・脂肪細胞前駆細胞であるCAR(CXCL12-abundant reticular)細胞が,造血幹細胞・前駆細胞ニッチを構成することが証明された。最近,フォークヘッドファミリーに属する転写因子Foxc1がCAR細胞で高発現すること,発生の過程でCAR細胞のニッチ構成能を形成・維持し,脂肪細胞への分化を抑制していることが報告された。この知見により,哺乳類ではじめて幹細胞・前駆細胞ニッチの構成に特化した細胞系列の存在,その形成と維持の分子機構が明らかになった。