連載 記憶に残る症例(37)
アデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症と遺伝子治療
有賀正
1
Tadashi Ariga
1
1北海道大学大学院医学研究院小児科学教室教授
pp.106-112
発行日 2017年12月15日
Published Date 2017/12/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201801106
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
アデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症は,先天性代謝異常にも分類される常染色体劣性遺伝の重症複合免疫不全症(SCID)である。SCIDとなる疾患はすでに20種類近く確認されているが,ADA欠損症はSCIDの中では2番目に多く,その約15%を占めている。ADA欠損症は極めて稀な疾患といえるが,公認された初めての遺伝子治療の対象として広く知られている。1995年,本邦でも初めての遺伝子治療臨床研究が本疾患に対して実施され,筆者はこの遺伝子治療臨床研究(総括責任者:北海道大学小児科・崎山幸雄)に関与することができた。本稿では本疾患の概説,遺伝子治療発展の歴史,筆者が経験したADA欠損症症例とその患者に対する遺伝子治療臨床研究についての経緯を紹介する。