特集 アレルギー疾患とバリア障害
Ⅹ.アトピー性皮膚炎は予防できるか?
大矢幸弘
1
Yukihiro Ohya
1
1国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医長
pp.788-794
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201706086
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アトピー性皮膚炎は,アレルギー疾患の中でも突出してIgE抗体価が高い疾患であり,アレルゲンの回避策が治療のみならず発症予防にも有効であるとの仮説に基づき,多くの介入研究が行われた。しかし,初期の一部の研究を除けば21世紀に発表されたランダム化比較試験(RCT)で有効性の実証に成功したものはなく,ダニやペットなどの環境抗原の除去も食物アレルギーの頻度の高い食物抗原の除去も発症を阻止することができなかった。その後,今世紀の初めに,probioticsの投与を産前産後に行うと発症を抑制できるというRCTが発表され,多くの追試が行われたが,失敗例が多く,システマティックレビューにおいて重み付けをしたメタ解析では有意差を示すものの,まだ予防策としての評価は固まっていない。そのような状況のなか,保湿剤による表皮バリア機能の補正に着目した新生児期からの保湿剤塗布によるスキンケアで乳児期の発症を有意に抑制した2本のRCTsが2014年に発表された。