Japanese
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特集 バイオフィルム研究の最前線
Ⅰ 医歯薬学 2.バイオフィルム細胞外マトリクスの分離解析
Isolation of extracellular matrix from Staphylococcus aureus biofilm
水之江義充
1
,
千葉明生
2
,
岩瀬忠行
3
,
杉本真也
4
Mizunoe Yoshimitsu
1
,
Chiba Akio
2
,
Iwase Tadayuki
3
,
Sugimoto Shinya
4
1東京慈恵会医科大学細菌学講座 教授
2東京慈恵会医科大学細菌学講座/東京慈恵会医科大学感染制御部
3東京慈恵会医科大学細菌学講座 講師
4東京慈恵会医科大学細菌学講座 講師
キーワード:
バイオフィルム
,
細胞外マトリクス(ECM)
,
マトリクスタンパク質
,
黄色ブドウ球菌
Keyword:
バイオフィルム
,
細胞外マトリクス(ECM)
,
マトリクスタンパク質
,
黄色ブドウ球菌
pp.36-43
発行日 2015年10月25日
Published Date 2015/10/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201511036
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黄色ブドウ球菌は軽微な皮膚感染症から重篤な肺炎や心内膜炎まで多彩な感染症を引き起こす。多剤耐性の黄色ブドウ球菌(Methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)による院内感染は医療機関において大きな問題となっている。薬剤耐性に加え,感染部位で形成されるバイオフィルムが治療の困難さを増している。我々は,表皮ブドウ球菌が産生するセリンプロテアーゼ(Esp)が黄色ブドウ球菌のバイオフィルムを破壊し,その鼻腔への定着を阻害していることを見出した。この破壊因子(Esp)の標的タンパク質を調べるために,Espの大量発現・精製系およびバイオフィルムからの細胞外マトリクス(extracellular matrix:ECM)の抽出法を確立している。ECMには約130種類のタンパク質が存在し,その半数がEspにより分解されている。Espは,黄色ブドウ球菌のバイオフィルム関連タンパク質や,細菌-宿主間相互作用に重要な宿主タンパク質を分解することを明らかにした。Espは,黄色ブドウ球菌のバイオフィルムマトリクスタンパク質および宿主のレセプタータンパク質を分解することにより,黄色ブドウ球菌の定着を防いでいると考えられる。マトリクスタンパク質に焦点を当てた新たなバイフィルム形成・阻害メカニズムの解明をとおして,バイオフィルム感染症の治療・予防法の開発につなげたいと思っている。