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連載 忘れてはならない輸入感染症と稀少感染症(7)
海外旅行と感染症-旅行者下痢症・コレラ-
Travelers’diarrhea and cholera
相楽裕子
1
Sagara Hiroko
1
1東京都保健医療公社豊島病院感染症内科
キーワード:
旅行者下痢症
,
毒素原性大腸菌
,
コレラ
,
経口輸液
Keyword:
旅行者下痢症
,
毒素原性大腸菌
,
コレラ
,
経口輸液
pp.117-125
発行日 2012年12月25日
Published Date 2012/12/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201301117
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熱帯地方への旅行にともなう感染症の中でもっとも危険が大きいのは旅行者下痢症で,20~50%,場合によっては90%にも及ぶ。検出病原体は2週間以内の旅行では細菌が圧倒的に多いが,2週間以上では細菌のほか,ランブル鞭毛虫・赤痢アメーバ等の原虫や,チフス菌・パラチフスA菌の感染リスクが高くなる。旅行目的が観光以外の仕事やボランティア活動などでは現地社会との交流が深くなるため,短期間でも感染リスクが高い。コレラは現在も熱帯地方を中心に集団発生をくり返しているが,先進国の健常宿主では重症例は少ない。下痢症は宿主の免疫能が正常であれば対症療法によって自然治癒する傾向が強い。そのため,急性下痢症では経口輸液を含む輸液を最優先し,重症例では抗菌薬による初期治療を行う。