医薬ジャーナル論壇
偽造医薬品事件と薬剤師の倫理 −対物業務と対人業務は不即不離−
前田健一郎
1
1本誌編集部
pp.1197-1199
発行日 2017年5月1日
Published Date 2017/5/1
DOI https://doi.org/10.20837/12017051197
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C型肝炎治療薬ハーボニー配合錠(一般名:レジパスビル/ソホスブビル)の偽造医薬品が,奈良県内のチェーン薬局で発見された事件は,関係者の間に大きな波紋を投げかけた。従来,日本の医薬品流通は厳格に管理されていると考えられ,偽造医薬品についてはインターネット経由の不正取引のみが警戒されてきた。ところが,今回は偽造医薬品が合法的なルートを経由し,薬局でそのまま調剤されて,患者の手に渡ってしまったのである。国が2015年に発表した「患者のための薬局ビジョン」では,薬剤師に対し,対物業務が中心の業務内容から,対人業務を主とする職能へと転換することが求められている。患者の命に直結する医薬品は,単なる“商品”ではない。人の生命と健康を預かる医療職として,薬剤師は改めて自らの倫理的使命を重く受け止めなければならない。