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わが国では日本動脈硬化学会より「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」が発行され,その中で脂質異常症についての脂質管理目標値が定められた。本稿では脂質異常症の中でも高低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)血症の治療指針について,2012年版に基づいて述べる。本ガイドラインは2017年に改訂を予定しており,改訂に向けて考慮している点の現状も紹介したい。2012年版ではNIPPON DATA80の冠動脈疾患の10年間の死亡率を一次予防のための患者のリスク評価に用いたが,このコホートはスタチンが使われていない時代に登録されたものである。スタチン等の薬剤が幅広く使われている今日では,冠動脈疾患の10年間の死亡率は明らかに減少しているため,時代に即した日本人コホートのデータを用いる必要がある。そこで,「日本人の脳・心血管疾患の発症・予防を予測するツールは存在しているか」というClinical Questionを設定して,わが国で行われた疫学研究をSystemic reviewした結果,吹田スコアを用いて冠動脈疾患の10年間の発症率を算出する予定である。一次予防ではスコアに基づいて低リスク,中リスク,高リスクに分類し,LDL-Cの管理目標値を決める。管理目標値の設定に関しては2012年以降に発表されたわが国のエビデンスを取り入れる。そのため,二次予防症例ではACC/AHAガイドライン2013のようなFire and forgetではなく,従来からのTreat to targetの考え方を採用するとともに,IMPROVE-IT試験等の海外のエビデンスやわが国の冠動脈内超音波(IVUS)を用いたプラークの定量的評価の試験結果も踏まえて,二次予防の中でどのような場合にどのように脂質管理目標値を定めるのかについても議論がなされている。その他,① 非高比重リポ蛋白コレステロール(Non HDL-C)とLDL-Cの直接測定法,② 小児を含む家族性高コレステロール血症(FH),③ 新たな脂質異常症治療薬,④ 食事療法等に関する記載も改訂される予定である。