急性膵炎-診療ガイドラインの改訂を受けて
急性膵炎の診断 診断基準
阪上 順一
1
,
片岡 慶正
,
保田 宏明
,
十亀 義生
,
加藤 隆介
,
三宅 隼人
,
土井 俊文
,
伊藤 義人
1京都府立医科大学 大学院医学研究科消化器内科
キーワード:
Triacylglycerol Lipase
,
膵炎
,
重症度指標
,
胆石
,
Pancreatic Alpha-Amylases
,
PRSS2 Protein
Keyword:
Lipase
,
Pancreatitis
,
Severity of Illness Index
,
Gallstones
,
Pancreatic alpha-Amylases
,
PRSS2 Protein, Human
pp.515-522
発行日 2016年4月20日
Published Date 2016/4/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01937.2016251535
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厚生労働省・急性膵炎診断基準(2008)では,(1)症状,(2)膵酵素上昇,(3)画像診断の3項目のうち2項目以上を満たし,他疾患の除外で診断できる.改訂アトランタ分類(2012)における急性膵炎の断基準など海外診断基準でも,基本的には類似の診断基準であるが,膵酵素上昇を正常上限の3倍以上に上昇している場合としている点などがわずかに本邦と異なっているため,本邦急性膵炎1,137例を改訂アトランタ分類・急性膵炎診断基準で再診断した場合,30例(2.6%)の症例が急性膵炎と診断できない結果となった.急性膵炎の90%以上に腹痛がみられるが,まれには無痛性の急性膵炎も存在する.近年,マルチキナーゼ阻害薬による急性膵炎の報告が散見されるが,既報の半数が無痛性であり今後の病態解明が待たれる.急性膵炎の診断には,血中リパーゼの測定が推奨されているが,血中リパーゼのみで急性膵炎の診断をしているケースは798例中7例(0.9%)にすぎなかった.急性膵炎と診断されれば成因診断を行う必要があり,とくに胆石性急性膵炎かどうかの診断は重要である.海外では,特発性急性膵炎と診断することを20%以下にすべきとしており,本邦でも特発性急性膵炎と成因診断することを少なくすべきである.急性膵炎と診断されれば,厚労省重症度スコア(2008)を経時的に評価する.厚労省重症度スコア(2008)での重症判定に対する急性期DICスコアのROC下面積(AUC)は0.77と高く,重症例は急性期DICスコアが有意に高値(P<0.0001)であるが,その関連性については今後検討すべき課題である.
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