特集 生殖医療のファーストライン・セカンドライン―診療ストラテジーと方針変更のタイミング―
企画者のことば
杉本 公平
1
K. Sugimoto
1
1獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンター(教授)
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000000512
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自分が産婦人科医の道を選んだ理由は,大学5年生のとき,ポリクリでその頃はまだ珍しかった体外受精・胚移植を見て深い感銘を受けたことであった。入局する時に「自分は不妊班に入りたいです。」と言ったことを覚えている。しばらくは「不妊班」という名称であったのがいつ頃からか「生殖班」という名称に変わっていた。学会名も日本不妊学会から日本生殖医学会に変わっているからもっともなことだ。実際のところ,妊娠・出産を希望する患者に対しては,いわゆる不妊治療だけではなく,不育症治療,子宮筋腫や内膜症への内視鏡手術などの知識と技術も要求されるようになった。心理部門に対するニーズも高まり,それに対応する日本生殖心理学会,日本不妊カウンセリング学会といった大きな学会が2つも設立されるに至っている。最近では若年がん患者に対する妊孕性温存を目的とした「がん・生殖医療」という新しい領域が社会の注目を集め,ついにはそのガイドラインまで作成されるに至っている。一昔前には想像もできなかったくらい生殖医療の領域は拡張をし続けているのである。発展が著しい反面,生殖医療に関するガイドラインはいまだに十分とは言えない。生殖医療においては,医療の対象となる患者は不妊カップルであり,病態は一元的でなく多様性に富んでいる。さらに治療のオプションも多く,高額な自費診療であることも相俟って,統一したプロトコールでの臨床試験が組みにくい。そのような要因からガイドラインを作成することが困難であるためと考えられる。
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