胸郭出口症候群の電気生理学的診断とdisputed neurogenic TOS

Electrodiagnosis of thoracic outlet syndrome and disputed neurogenic TOS

要旨：胸郭出口症候群（TOS）は血管性と神経性に通常分けられるが，神経性TOSをめぐっては大きな議論がある。このうち，疾患概念が明確に確立されているのは真の神経性胸郭出口症候群（true neurogenic TOS）である。これは，頚肋ないし第7頚椎横突起から第1肋骨に延びる線維性索状物によって，T1＞C8の脊髄前枝，ないし，下神経幹が下方から圧迫を受けて，T1＞C8の腕神経叢障害をきたす疾患である。母指球優位の固有手筋の筋萎縮・筋力低下，T1支配の指屈筋（母指示指）の筋力低下などの運動障害を主徴とし，痛み・感覚障害はより軽度，ないしまれに欠如する。内側前腕皮神経の感覚神経伝導を含む神経伝導検査によって確実に診断できる。従来広く知られ，第1肋骨切除術がしばしば行われてきた神経性TOSは，disputed neurogenic TOSと呼ぶべきものであり，その概念・存在に疑問が呈されている。