特集 後腹膜アプローチを活用した消化器内視鏡外科手術
Ⅰ.外科解剖 1)後腹膜領域の層解剖
室生 暁
1
,
秋田 恵一
1
1東京医科歯科大学臨床解剖学分野
キーワード:
後腹膜領域
,
腎筋膜
,
腎周囲脂肪
Keyword:
後腹膜領域
,
腎筋膜
,
腎周囲脂肪
pp.881-890
発行日 2024年5月15日
Published Date 2024/5/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000003892
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Retroperitoneal spaceは,解剖学用語では「腹膜後隙」という訳となるが,「後腹膜腔」「後腹膜領域」といった呼称のほうが一般的である。後腹膜領域は三次元的な領域であり,上方の境界は横隔膜であり,下方は骨盤の腹膜外腔へ,外側は腹壁の腹膜外腔へと続いている(図1)1)。後方には体壁があり,その境界は横筋筋膜と考えてよいだろう。前方は膵臓や結腸間膜と接する部位において,その境界が複雑化している。発生過程で完全な腸間膜を有していた原始消化管が,消化管の伸長と腸回転の結果,後方の壁側腹膜に押し付けられ,上皮組織が消失して癒合筋膜が形成されると考えられている。このように複雑化した後腹膜領域の前方の層構造については,「癒合筋膜(fusion fascia)」「腎筋膜前葉」などをキーワードとして多くの議論が展開され,解剖・組織学的なデータでも研究が進められているが,いまだコンセンサスは得られていない。
Copyright © 2024, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.