Ⅲ．下部消化管領域 4）ロボット支援下側方リンパ節郭清術の基本

わが国における切除可能進行下部直腸癌における標準治療は，全直腸間膜切除（total mesorectal excision；TME）および側方リンパ節郭清術（lateral lymph node dissection；LLND）である。側方リンパ節転移を有する下部直腸癌の予後は不良であるが，R0切除症例では生存率の改善が得られるという後方視的報告1）は多く，その意義は大きい。また，術前側方リンパ節腫大を有さない症例ではJCOG0212試験2）で無再発生存期間において直腸間膜切除（mesorectal excision: ME）単独群のME＋LLND群に対する非劣性は証明されなかった。局所再発率はME＋LLND群がME群と比較して有意に低い結果であり，LLNDの局所制御効果が示唆された。そのため，大腸癌治療ガイドライン2022年版では深達度がcT3以深の下部直腸癌に対してLLNDが推奨3）されている。