憧鉄雑感
第164回〈増大号〉 皮膚科医としての爪,鉄道員としての爪
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.1575-1577
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000005476
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本増大号の特集テーマは “爪” である。爪は古来より身近な存在であるようであり,それに関する諺は多い。筆者など,本業を疎かにし斯様なエッセイなんぞ連載している影響からか,今や皮膚科学術雑誌からの依頼原稿もコラムや随筆と相場が決まってしまった。当然その原稿料では生活が出来ぬ為 “爪に火を灯す” 生活である。勉強嫌いが祟った訳であるが,さりとて偉大なる名医の “爪の垢を煎じて飲む” など,憖皮膚科医であるため他人の角質なんぞを体内に入れる苦行なんぞ真っ平ごめんである。結果,誤診だらけの皮膚科専門医が誕生した訳であるが,実は驚くべきことにこれは世を忍ぶ仮の姿であり “能ある鷹は爪を隠す” 行為である。白状すると,筆者は世の東西を問わず皮膚科学成書を読破しており,全て間違えぬ診断が可能である。しかし,爪を隠すことを信条とするあまり,周りに稀にみる名医の存在を知られるのを恐れ敢えて誤診をしているのである。これまで筆者からの紹介患者を診る医師は「またあの男が誤診した!」と思われようが,真相は斯様である。尤も,左様なデマカセを誰も信じぬのは甚だ遺憾であるが,鉄道敷地内において筆者は爪を出しまくっており郁子なるかなであろう。

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