憧鉄雑感
第84回 老人性色素斑
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団廣仁会札幌皮膚科クリニック,褥瘡・創傷治癒研究所
pp.437-437
発行日 2019年3月1日
Published Date 2019/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000001281
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名は体を表すというが,皮膚疾患における独特な病名は誠に便利である。例えば皮膚科医は “線状苔癬” という病名を聞いただけで,瞬時に臨床所見から病理,病態から治療まで思い浮かぶ。皮膚科学を作り上げてきた先人の慧眼であろう。しかし,時に病名が仇となる場合もある。いわゆる “シミ” を気にして来院する女性に “老人性色素斑” などとは口が裂けても言えぬ。そもそも,女性がいくつになっても美しくありたいというのは自然の摂理であり,高齢女性に対して他人である筆者が “老人” などというのは失礼極まりない。さりとて,筆者はテレビ司会者ではないので “お嬢さん” などと呼ぶ訳にもいかぬ。老人性色素斑は中年にもみられるため,病名を告げた瞬間ハラスメントと解される可能性すらある。いくらICD10に収載されていると言ったところで覆水は盆に返らぬ。
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