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胎盤特異的なアデノシンデアミナーゼの欠損によるアデノシンの胎盤への過剰蓄積が、妊娠マウスに妊娠高血圧腎症様症状を誘導する
入山 高行
1
,
藤井 知行
1東京大学医学部附属病院 女性診療科産科
キーワード:
Adenosine
,
Adenosine Deaminase
,
シグナルトランスダクション
,
遺伝子発現調節
,
子かん前症
,
胎盤
,
ノックアウトマウス
,
Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1
Keyword:
Adenosine Deaminase
,
Gene Expression Regulation
,
Placenta
,
Pre-Eclampsia
,
Signal Transduction
,
Mice, Knockout
,
Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1
,
Adenosine
pp.81-86
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.18888/J00535.2016221202
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様々なストレス下で誘導され、生理応答を担うシグナル伝達分子・アデノシン(Ado)は妊娠高血圧性腎症(PE)患者の母体血中および臍帯血中で発現が上昇していることが知られている。だが、その病態における意義は不明であった。そこで今回、著者らはAdo分解酵素アデノシンデアミナーゼ(ADA)が胎盤特異的に欠損し、Adoが胎盤に過剰蓄積する遺伝子改変マウスを作製し、病態を検討した。その結果、1)妊娠後半期に高血圧、蛋白尿が出現し、産褥期に回復するというヒトのPEと同様の症状を呈した。2)ヒトPE患者においても胎盤でのAdoの過剰蓄積を認め、マウス同様にAdoシグナルの重要性を示唆する結果が得られた。3)以上より、胎盤でのADA欠損マウスという新たなPE遺伝子改変モデルマウスの作製に成功し、胎盤でのAdoの過剰蓄積がPE発症の新たな一因である可能性を示すことができたが、将来的にはアデノシン、またはアデノシンシグナル経路の関連分子がPE発症の予知マーカーとなる可能性やアデノシンシグナル経路を標的とした治療の可能性について、更なる研究が必要と示唆された。
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