特集 心エコー計測/抽出のコツ,身につけたい考え方/進め方
Ⅱ 身につけたい考え方/進め方
3 病気を識る,病気を診る g. 肥大型心筋症/拡張型心筋症
松本 賢亮
1
1神戸大学医学部附属病院循環器内科
キーワード:
肥大型心筋症
,
拡張型心筋症
,
左室流出路狭窄
,
左室充満圧
,
前方駆出量
Keyword:
肥大型心筋症
,
拡張型心筋症
,
左室流出路狭窄
,
左室充満圧
,
前方駆出量
pp.154-163
発行日 2021年11月1日
Published Date 2021/11/1
DOI https://doi.org/10.18885/HV.0000000742
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心臓に対する「負荷(load)」はLaplaceの法則により説明可能である。心臓を球体に近似したとき,単位心筋あたりにかかる張力:心室壁応力(wall stress:σ)は,心室内圧(P)と内径(r)の積に比例し,壁厚(h)に反比例する。
σ=k×P・r/2 h k:定数
このとき,拡張末期における壁応力が前負荷(preload)であり,駆出期全体における壁応力が後負荷(afterload)となる。心臓の代償性構造変化は,慢性的な心血管系への負荷に対して,壁応力を適正化する合目的的・代償的なプロセスである。過大な圧負荷に対しては,壁厚を増大させつつ内径を短縮させることにより壁応力を低減させ(求心性肥大),一方,過大な容量負荷に対しては遠心性肥大によりこれに対処しようとする。つまり,これら負荷条件の異常がないにもかかわらず,それに不釣り合いな程度の肥大や心拡大が認められた場合,われわれは心筋症の存在を想起することになる。
Copyright © 2021, MEDICAL VIEW CO., LTD. All rights reserved.