特集2 判例からみる医療訴訟
未破裂脳動脈瘤治療に対するコイル塞栓術において脳梗塞により死亡した1例(東京高裁 平成17年5月25日)
松丸 祐司
1
1筑波大学医学医療系 脳神経外科 脳卒中予防・治療学講座
キーワード:
未破裂脳動脈瘤(unruptured cerebral aneurysm)
,
血管内治療(endovascular treatment)
,
医療訴訟(medical litigation)
Keyword:
未破裂脳動脈瘤(unruptured cerebral aneurysm)
,
血管内治療(endovascular treatment)
,
医療訴訟(medical litigation)
pp.1498-1501
発行日 2022年12月26日
Published Date 2022/12/26
DOI https://doi.org/10.18885/CI.0000001121
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症例は60歳代,男性,左内頸動脈の未破裂脳動脈瘤に対し平成8年にinterlocking detachable coilによって塞栓術が行われた。初めは開頭手術が予定されたが,術前の再検討により急遽治療方針が変更された。コイルの挿入を試みたが母血管に逸脱するため断念し,アンラベルと早期離断が発生しコイルの回収は困難で,引き続き開頭治療を行ったが広範な脳梗塞を発症し死亡した。一審(東京地裁)では,医療行為の過失はなく,「説明義務違反」のみ認められたが,二審(東京高裁)では「説明義務違反もない」と判断された。二審での裁判所の判断は妥当と思われるが,特に無症候の患者に対する予防的な治療では十分時間をかけた説明が必要であり,さらに効果や安全性の確立されていない新規治療法では,より慎重な適応が必要である。
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