- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.は じ め に
2024年12月13日(金)~14日(土)に福岡市の福岡国際会議場で開催された第35回日本小児整形外科学会(図1)に参加させていただいたので,学会の雰囲気や講演の内容を報告させていただく.
本学会は日本小児整形外科学会が開催する年に1度の学術集会で,日本全国の小児整形外科医,メディカルスタッフ,小児整形外科に興味がある先生方が集まる学会である.小児整形外科医の集まりは医局や病院の垣根を超えて仲がよいことが特徴である.本学会に参加すると,小児整形外科医やメディカルスタッフたちは,運動器疾患で悩む子どもたちの未来を支える同志として,強い絆で結ばれていることを認識できる.小児整形外科学会には約1,000名が所属しており,今回の学会には500名以上が参加した.初日の夕方に開催された懇親会にも277名が参加しており,特別な出し物があったわけではないが,たいへんな盛り上がりをみせていた.おいしい食事とお酒で初日の学会発表の疲れをとった後は,皆さんそれぞれ福岡の街へと消えていった(図2).
小児整形外科疾患は,骨折やスポーツ障害などの一般的なものから遺伝性疾患,代謝性疾患,腫瘍性疾患やまだ原因のわかっていない特発性疾患など多様性に富んだ疾患が含まれる.また,脊椎や四肢のさまざまな部位にさまざまな症状や障害を呈するため,診断も治療も多くの経験と知識を必要とする.日本小児整形外科学会は,そのようなさまざまな部位のさまざまな疾患を網羅的に学べる学会であり,また,小児整形外科医は,施設ごとにこれまでの歴史的な経緯からくる独自の考え方や治療法をもっている先生方が多く,同じセッションの中でも異なる診断方法や治療方法が発表される.講演を聞いていると,一つの疾患に対して一つの治療方法があるのではなく,一つの疾患に対してさまざまなアプローチや治療方法,治療の考え方があることがわかるが,診断=治療方法と定型的な教育を受けてきた医学生や専攻医は,驚くくらいの多様性を知ることができると思う.また,小児独特の問題として,成人への移行期の問題や他科との連携など,どの小児病院でも抱えている悩みについて議論するセッションもあり,一般演題・パネルディカッション・シンポジウム,そして休憩スペースや懇親会会場でも,たくさんの先生が白熱した議論を展開していた.自分自身も治療方法に悩んでいる患者の情報をスライドにして準備し,いろいろな施設の経験豊富な先生方をポスター会場や休憩所でつかまえては相談し,治療方法についてアドバイスをもらった.相談する先生によって考え方も治療方法も異なり,治療方法を選択するうえでのピットフォールや経験など貴重なお話しを聞くことができた.2日目の学会の後には,現在日本小児整形外科学会ですすめられているマルチセンタースタディの報告会があり,今までは施設ごとの経験則で行われていた治療が徐々にデータベース化されており,今後日本から出てくる新しい知見に結びつく可能性を感じることができた.

© Nankodo Co., Ltd., 2025