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2017年に出版された『重度四肢外傷の標準的治療』(南江堂)から8年の歳月を経て,本書が出版された.『重度四肢外傷の標準的治療』は今も外傷整形外科医にとって重度四肢外傷治療の羅針盤であることに違いはないが,医療技術の進歩や医療を取り巻く環境の変化に伴い,この領域も柔軟かつ緻密な治療戦略を基礎として進化した対応が求められている.そのような中,待望の書が発刊された.待望の理由は,本書が日本で重度四肢外傷治療の分野を確立させるとともに牽引してきた土田芳彦先生の “単著” だからである.一貫した著者自身の言葉で本分野に対する治療戦略の詳細が語られていることは単著ならではの最大の魅力になっている.長年にわたり真摯な姿勢で重度四肢外傷に取り組んできたからこそ自信をもって伝えることができる多くの実践的な成功のためのチップスが惜しみなく紹介されているのである.本書を通読した率直な感想は「臨床の最前線で日々奮闘している外傷整形外科医にとって,本当に知りたい疑問を明瞭かつストレートに解説されており,それが清々しくも感じる」ということである.重度四肢外傷という一筋縄では満足のいく結果が得られない症例を題材とし,いまだその治療戦略がダイナミックに進歩している中で,現時点での外傷整形外科医にとって一つのめざすべき治療戦略を明らかにしているのではないかと思う.過去の偉大な教科書にもこのチャレンジングな分野(著者はチャレンジングではなく標準化ととらえている)に対しては差し障りのない解説が一般的であり,明快に回答していることは少ない.しかし,一般的には治療に難渋するといわれる重度四肢外傷も,もちろん高度な技術と観察力を要することは当然であるが,本書を読み理解を深めれば,その治療の軸は実はシンプルであることがわかる.
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