Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
【要 旨】
目 的:末梢神経欠損損傷における標準治療は自家神経移植であるが,採取部の犠牲という大きなデメリットを伴う.代替法としてさまざまな人工神経が開発されてきたが,その成績は自家神経移植には及ばず,いかに人工神経移植の成績を向上させるかが重要課題となっている.われわれは末梢神経再生促進能を有するメチルコバラミン(MeCbl)含有局所徐放ナノファイバーシート(MeCbl sheet)を開発した.本研究はラット坐骨神経欠損モデルにおけるMeCbl sheetと本邦初の人工神経である神経再生誘導チューブ(polyglycolic acid tube filled with collagen sponge:PGA-c)の併用効果を検討した.
対象および方法:ラット坐骨神経の展開のみを行ったsham群(n=10),坐骨神経10mm欠損部をPGA-cで架橋したPGA-c群(n=9),坐骨神経10mm欠損部をPGA-cで架橋し14×10mm大のMeCbl sheetを留置したPGA-c/sheet群(n=8),坐骨神経10mmを翻転縫合した自家移植群(n=10)の4群を作製した.術後12週における運動・感覚機能評価,電気生理学的評価,組織学的評価を行った.
結 果:von Frey filament test,terminal latency,有髄軸索面積%,髄鞘化率,g-ratioにおいてPGA-c/sheet群はPGA-c群に対して有意な改善を認めた.運動機能評価においてPGA-c/sheet群とPGA-c群の間に有意差はなかった.
結 論:MeCbl sheetは,ラット坐骨神経欠損モデルにおいてPGA-cと併用することで術後12週での末梢神経再生を促進した.MeCbl sheetは末梢神経欠損に対する人工神経移植術において,神経再生を促進する新たな治療法となる可能性がある.
© Nankodo Co., Ltd., 2021