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1.は じ め に
2018年10月19日(金)~20日(土)の2日間,大阪国際会議場(大阪市)で第45回日本肩関節学会が菅本一臣会長(大阪大学運動器バイオマテリアル寄付講座)のもとで開催された.本学会のテーマは「肩関節を議論する “discuss the shoulder”」であった.学会で通常設定される主題とは別に,1年間かけて検討した結果を発表する「宿題報告」セッションが設けられたり,公募採択演題430題のすべてが口演形式(ポスターなし)であったりするなど,discuss the shoulderを体現する特色が随所にみられた.海外からの招待演者はイギリスから1名,アルゼンチンから1名,タイから1名,台湾から1名,韓国から6名であった.このうちアルゼンチンのDaniel Moya先生(Buenos Aires British Hospital)は2019年開催予定の国際肩肘関節外科学会の会長を務められており,全体にアジア重視の論陣であったといえる.これも日本独自のオリジナリティある研究を世界に問うという菅本会長の姿勢を敷衍したものと思われる.日本や韓国は欧米からみればFar East(極東)にあたるわけで,そこから世界に向けて優れた研究を醸成・発信しプレゼンスを高めていこうという気概の表れであると受け取られた.
また,同じ期間で第15回肩の運動機能研究会が佐原亘会長(大阪大学医学部附属病院リハビリテーション科)のもと併催された.テーマは肩関節学会と関連して「セラピストとして肩関節を議論する」であり,こちらでも全採択演題で口演形式が採用された.今年で15回を数える当研究会であるが毎年演題数は増加しており本年は261題に達した.そのうち37題は病棟看護・周術期看護など看護領域を題材にしたものであった.2017年は「第1回肩の看護研究会」が独立して肩関節学会と併催され73題もの口演発表で盛り上がりをみせていたが,その流れは今回も受け継がれていたと考えられる.肩関節治療が手術だけで成り立つわけではないのはもちろんのこと,リハビリテーションやさらには看護のメディカルスタッフも一体になって治療を形成する必要があるという意識が高まっている証拠であろう.2018年だけでなくこれからもますます活況を呈することが予想される肩の運動機能研究会であるが,その運営母体を整備する一環として会員制に移行することが主催者側から説明されたことを付記しておく.
なお,ここ何年か企画されていた医師とセラピストがともにパネラーとなって討議するコンバインドセッションは,今回は開かれなかった.
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