Japanese
English
特集 子どもの運動器障害――学校検診から日常診療まで
Ⅵ.学校検診の取り組みと各地域での実状
5.埼玉県における運動器検診の状況
Saitama school medical examination of locomotive organs
林 承弘
1
,
小室 保尚
2
,
柴田 輝明
3
S. Hayashi
1
,
Y. Komuro
2
,
T. Shibata
3
1林整形外科
2小室クリニック
3北本整形外科
1Hayashi Orthopedic Clinic, Saitama
キーワード:
child locomotive syndrome
,
parents check
,
consultation rates
Keyword:
child locomotive syndrome
,
parents check
,
consultation rates
pp.718-724
発行日 2019年5月10日
Published Date 2019/5/10
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_718
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
近年,姿勢がわるく疲れやすい,肩こりや腰痛あり,転ぶときに手が出ない,雑巾がけで手で体を支えられず歯を折ってしまう,和式トイレが使えない,骨折しやすいなど,子どもの身体に異変が生じている.超便利社会になった今日,運動のしすぎによるスポーツ障害だけでなく,運動不足や姿勢不良による子どもの運動器機能低下という二極化が大きな問題となっている.
こうした社会背景のもと,埼玉県では2007(平成19)年度より学校における運動器検診モデル事業が開始された.熟練の整形外科医を検診担当として実施された運動器検診結果は,子どもの運動器機能の異変を裏づけるものであった.身体を動かす基本動作である,① 片脚でしっかり立つ,② 上肢を垂直に挙げる,③ しゃがみ込む,④ 体前屈する,これらのうち一つでもできない児童生徒は,実に4割強にのぼった.こうした身体バランスや柔軟性および反射神経の低下した状態は,ケガや故障を誘発しやすく,警鐘を鳴らすために「子どもロコモ」と名づけた1).
2016(平成28)年度より,整形外科にとって悲願であった学校運動器検診が導入されることとなり,「児童生徒等の健康診断マニュアル」に沿って全国の学校で運動器検診のスタートが切られた.埼玉県では運動器検診導入後,地域でいくつかの取り組みが行われており,本稿ではさいたま市と鴻巣市の例を文部科学省の全国中間報告と比較し,また埼玉県医師会学校医会が実施したアンケート調査結果もふまえ,実際の運動器検診の現状や問題点,今後の方向性などについて検討した.
© Nankodo Co., Ltd., 2019