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は じ め に
脊椎分離症および分離すべり症(ここでは腰椎に絞る)は,子どもの運動器障害の一つとしてあげられる.われわれの調査では,発育期に腰痛が2週間以上続いた場合,小・中学生ではその約40~50%が,高校生では約30%が腰椎分離(すべり)症であった.一方,初診時に腰椎分離症(分離症)と診断された患者全体からみれば,そのほぼ1割が小学生,6割が中学生,3割が高校生であった1).以上より,分離症は発育期(ほとんどが18歳未満のこども)で発生/発症する病態であるといえる.
分離症は,以前は遺伝的な疾患であり2),受け入れざるをえない病態と考えられていたようだが,スポーツ愛好家によくみられる点や3),最近の生体力学的検討から,その病態については疲労骨折説が有力である4).現時点における筆者らの見解は,「なんらかの遺伝的素因をもつ個体に,繰り返されるメカニカルストレスが加わることにより,発生する疲労骨折」である.
分離症の定義(狭義)は,「関節突起幹部の骨性連続性がない状態」を指すが,最近では「分離症=疲労骨折」としての認識が広まり,画像診断技術の進歩も加わり,疲労骨折が進行中あるいは骨折する前の状態をも含めて分離症としている.狭義の定義に従い調査した結果では,わが国の成人においては約6%(男性8%,女性4%)の頻度で腰椎分離症がみられた5).これらの分離症をもつ全員が有症状とは考えにくく,過去の文献から推計すると,その約4割が症候性となり6),「患者」となるポテンシャルが高いと考えられる.
分離症の正確な生涯有症率はわかっていないが,発育期に発生する病態であることを考えれば,発育期に治しておく(骨癒合を得る)こと,あるいは発生させない(予防する)ことが,いかに重要かがわかるかと思う.本稿では,分離(すべり)症に対して,筆者らが行っている診断方法・治療について,今後に残された課題も含めて述べていきたい.
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