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は じ め に
関節拘縮とは皮膚の筋肉や神経などの関節構成体以外の軟部組織の変化によって生じる関節の可動域(ROM)制限のことで,病理学的には関節包,靱帯,筋肉,筋膜,皮下組織,皮膚などが線維化することによって,伸展性を減じている状態である(表1).原因としては先天性のもの以外に,脱臼,骨折,関節炎,やけど,中枢神経麻痺による筋肉の短縮,長期間の関節固定などがある.
先天性多発性関節拘縮症に代表される関節拘縮を主訴とする先天性疾患は単発性と多発性に分類され,多発性のものを “arthrogtyposis”「関節拘縮症」と呼称する.Arthrogryposisという単語は「関節」という意味の “arthro” と「曲がった」という意味の “gryposis” が組み合わさったものである.Arthrogryposisには三つの型があり(図1),もっとも頻度の高いものはamyoplasia「筋形成不全」で,発生率はおよそ1万人に1人である.それ以外に “distal arthrogryposis”「遠位型関節拘縮症」と症候性関節拘縮症がある1).「先天性多発性関節拘縮症」という言葉は “arthrogryposis mutliplex congenita(AMC)” の日本語訳であり,AMCの言葉の成り立ちは “arthrogryposis” に “mutliplex” すなわち「多発性」と “congenita”「先天性」を続けて “arthrogryposis mutliplex congenita” となったものである.AMCはarthrogryposisと同義語として用いられている場合とamyoplasiaと同義語として用いられている場合があり若干の混乱がある.
Amyoplasiaは時に “classical arthrogryposis” と呼ばれ,ほかの型と異なり基本的に遺伝しない.罹患は対称性で,特徴的な肢位を呈する(図2).身体各部位の罹患頻度を表2に示す2).典型的には肩関節は内転し,肘関節は伸展位で拘縮している.手関節は強い掌屈位をとる.手指は低形成で内転母指を呈することが多い.下肢においては拘縮を伴った股関節脱臼が約15%に認められる.膝関節は伸展拘縮していることも屈曲拘縮していることもあるが,いずれであっても拘縮は重度である.足部は非常に硬い内反尖足または垂直距骨である.顔面や体幹にも関節拘縮が存在することもあり,脊柱ROMの低下のみならず側弯症や腰椎前弯症を少なからず認める.胎児期には胎動が少ないことが特徴で,硬い四肢と骨盤位のために帝王切開となることが多い.また生下時に長管骨の骨折が存在したり,体幹の筋の形成不全から鼡径ヘルニアを合併することがある.知的障害はなく,重症例を除くと5歳までには歩行能力を獲得する.
Distal arthrogryposisは遠位小関節の拘縮を主症状とする症候群である.現在数多くの責任遺伝子が同定され,11の症候群がこの型に分類されている3).もっともよく知られているFreeman-Sheldon症候群は2型に属し,内転母指と手指尺側偏位に加えて小口症(口笛を吹いている口に似ていることからwhistling mouth症候群といわれる)を示すのが特徴である(図3).症候性の関節拘縮症はいわばその他の関節拘縮症であり種々の疾患が含まれる.
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