学会を聞く
第53回日本脊髄障害医学会
辻 収彦
1
O. Tsuji
1
1慶應義塾大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., School of Medicine, Keio University, Tokyo
pp.295-297
発行日 2019年3月1日
Published Date 2019/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_295
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1.は じ め に
2018年11月22日(木)~23日(金)の2日間にわたりウインク愛知(名古屋市)で,高安正和会長(愛知医科大学脳神経外科学)のもと,本学会が開催された.本学会の前身である日本パラプレジア医学会は第1回を1966年に当時の九州大学整形外科・天児民和教授により開催され,2002年に現在の名称である日本脊髄障害医学会に改称し現在にいたっている.関連分野の学会では,日本脊椎脊髄病学会が2018年で47回,日本脊髄外科学会が33回であることからも非常に歴史と伝統のある学会である.脳神経外科による開催は第47回の花北順哉氏以来6年ぶり,また名古屋での開催となると中川洋氏(前愛知医科大学教授)が担当されて以来15年ぶりとのことである.本学会は脊髄障害を集学的に扱う学会であり,全国から整形外科,脳神経外科,泌尿器科,リハビリテーション科,神経内科をはじめ各科の医師,リハビリテーション専門職,看護師らおよそ500名が参加した.
テーマは「脊髄損傷の急性期治療を見直す」であった.救急医療の現場では,脳梗塞に対する急性期血栓回収療法により明らかな予後が得られている一方,脊髄損傷に対しては急性期から介入すべきか否かについては,いまだ議論のあるところであることから,そのメリットと限界について各領域のスペシャリストの方々の活発な議論が交わされた.また,脊髄損傷に対するiPS細胞や骨髄間葉系肝細胞による神経再生医療における大きなトピックスが相次いで発表されたことに呼応し,これからはじまる数々の臨床研究や知見を,確実に患者の治療につなげることを念頭においた研究発表・質疑応答が続き非常に盛況であった.
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