誌説
医療安全とWHO戦略に基づく多職種連携教育
渡邊 秀臣
1,2
1群馬大学副学長
2WHO連携・医療安全担当
pp.702-702
発行日 2018年6月1日
Published Date 2018/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_702
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
日本医療機能評価機構は今年3月,2017年の医療事故報告件数が4,095件(前年より213件の増加)と年々増加して,過去最多であると明らかにした.こうした報告,あるいは施設内のインシデント,アクシデントの報告体制が充実してきたことにより,医療における事故の発生原因についてはかなり明らかになってきた.人の犯すミス,いわゆるヒューマンエラーは医療事故の重大な原因である.医事紛争でもこのヒューマンエラーが大きく関わっている.厚生労働省は「医療行為と刑事責任」をテーマにした有識者研究会を開いて事例検討を行っており,「うっかりミス」と表されるような軽率性と刑事事件化に注目している.整形外科は医事紛争の件数が多い診療科であり,ヒューマンエラーは整形外科医の診療においてもっとも注意して避けるべきことである.
ヒューマンエラーは,心理学的に「行為そのものの失敗」である「スリップ(注意の失敗)」と「ラプス(記憶の失敗)」の二つと,「精神プロセスの失敗」である「ミステイク(間違い)」に分けられる.重森は,ヒューマンエラーを避けるために「いつもと違うことをする時は注意」,「同じパターンが続く時は注意」,「同時にたくさんのことには注意できない」,「不安も注意を奪う」などの注意点をあげた1).しかし,「この世に間違いをやらぬ人はない “To err is human”」という有名な言葉があるように,これも真実である.エラーの起こる背景,原因がわかっても,絶対にエラーをしないとは誰も断言できない.では,忙しい医療現場でどうやって医療の事故を防ぐのか?
© Nankodo Co., Ltd., 2018