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Case summary
79歳女性.発熱を主訴に前医を受診した.1ヵ月前から夕方になると38℃台の発熱があるも,咳や痰といった呼吸器症状はなかった.前医での胸部X線・CT検査で縦隔リンパ節腫脹を認め(図1~3),血液検査で可溶性IL-2受容体が高値であったため,当院を紹介され受診した.造影CTではリンパ節の中心部に不均一な低濃度領域を認め,また,リンパ節辺縁が不規則な厚みで造影されていた(図2).肺野にはごく軽度の索状影を認めるも明らかな活動性病変は認めなかった.5ヵ月前に潰瘍性大腸炎のため結腸切除術を施行されたが,術後経過に問題なく,腹部の感染所見は認めなかった.痰を認めないため喀痰検査は施行できず,胃液での抗酸菌検査,血液検査(インターフェロンγ遊離試験(interferon gamma release assay:IGRA)を含む)を行うとともに気管支鏡検査を施行した.気管支鏡の内腔所見では白色の膿性の分泌物を認め(図4),超音波気管支鏡ガイド下針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)により縦隔リンパ節より検体採取を行った.病理検体から壊死性肉芽腫を認め,結核菌の菌体は認めないもののPCRで結核菌のDNAが検出された.また,T-SPOT®が陽性であり,胃液での抗酸菌塗抹は陰性であったが,培養検査で結核菌を検出し,薬剤感受性検査を施行でき,抗結核薬に耐性がないことが確認された.気管支鏡の検体では抗酸菌の塗抹・培養は陰性であり,薬剤感受性検査が施行できたのは胃液検体のみであった.isoniazid(INH)+rifampicin(RFP)+ethambutol(EB)+pyrazinamide(PZA)の4剤で治療を開始し,数日で速やかに解熱,治療効果を実感できた.1ヵ月程度で肝障害のため一時全薬剤を休薬したが,EB+levofloxacin(LVFX)で治療を再開しながらINH,RFPを減感作で再投与し,最終的にINH+RFP 2剤を9ヵ月以上投与して治療を完遂できた(図5).治療後半年以上経過しているが,再燃を認めず経過している.
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