特集 好きになる呼吸器学―珠玉の症例集から
珠玉の症例集 ~印象深い症例・思い出の症例より~
[Case 3]呼吸不全は呼吸器疾患だけではない
井上 純人
1
1山形大学医学部附属病院 第一内科
キーワード:
呼吸不全
,
鑑別診断
,
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
Keyword:
呼吸不全
,
鑑別診断
,
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
pp.867-870
発行日 2022年11月1日
Published Date 2022/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika130_867
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Case summary
70歳代の男性が消化器内科へ入院した.主訴は体重減少ということで,半年間で10kg近い体重の減少があったため家族に心配され受診をした.食欲の低下もあったため,何らかの消化器疾患が原因と推定され,消化器内科へ入院のうえ精査を行う方針となった.既往歴に特記すべき疾患はなく,家族歴にも同様の経過をたどった方はいないということであった.職業は農業であったが,体重減少と食欲低下のため,入院前は仕事を休みがちになっていたということである.生活歴は喫煙を1日10本,20歳から入院前まで継続していた.飲酒は毎日ビール大瓶1本,動物は犬を屋外で飼育しており,農業以外の業務での粉塵曝露は明らかではなかった.
入院時の現症は,身長160cm,体重45kg,体温36.5 ℃,呼吸数18回/分,脈拍82回/分・整,血圧134/76mmHg,動脈血酸素飽和度(室内気)97%,胸部聴診上心雑音は聴取せず,呼吸音は左右差なく,ラ音を聴取しなかった.腹部は平坦・軟でグル音は正常に聴取し,触診上問題となる所見を認めなかった.皮膚に異常は認めず,浮腫を認めなかった.採血では血算は正常で,白血球の分画も特記すべき所見を認めなかった.生化学検査では肝機能,腎機能に問題を認めず,脂質,血糖値も基準範囲内であった.炎症所見は認めなかった.腫瘍マーカーはCEA,CA19-9,SCCが測定されたが,いずれも基準範囲内であった.尿所見に問題は認めず,便潜血は2日間検査を行いいずれも陰性であった.
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