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現在,国民の2人に1人はがんに罹患し,3人に1人はがんで亡くなる時代となりました.がん医療の質的向上の重要性は増しており,患者へ安全で有効ながん薬物療法を提供する意義は大きくなっています.一般的に,がん薬物療法はベネフィットとリスク(治療効果と副作用など)のバランスが重要です.副作用を可能な限り軽減することは,治療効果を高めることにつながり,結果としてがん薬物療法を受ける患者の得られるベネフィットはより増大します.
がん薬物療法のなかで,免疫チェックポイント阻害薬は多くの悪性腫瘍で使われるようになりました.当初,免疫チェックポイント阻害薬は単剤療法でした.その後,免疫チェックポイント阻害薬どうしの併用療法や免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん薬との併用療法など治療が複雑化しています.免疫チェックポイント阻害薬に伴う副作用は,免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれ,細胞障害性抗がん薬と比べて発現頻度は低いものの,まれに重篤化することがあります.さらに,「いつ起こるのか?」という発現時期は不明です.そのため,外来通院治療における患者・家族への教育,多職種連携によるチーム医療およびかかりつけ薬局と病院との施設連携など,さまざまな面からのアプローチによるirAEの早期発見とそのマネジメントが重要です.
本増刊号は,看護師の皆さまが「明日から使える」をコンセプトとしたirAEマネジメントの特集です.実臨床ですぐに実践できるように患者・家族への説明方法や医師・薬剤師からのメッセージ,事例による解説をしています.とくに頻度の低い有害事象は経験することが少ないため,どのような支援をしたらよいか悩まれることもあると思います.そのようなときに,本書がより一人ひとりの患者の看護ケアを充実させる一助となれば幸いです.
本増刊号が,免疫チェックポイント阻害薬のirAEマネジメントにとどまらず,患者・家族のベネフィットへつながることを願っています.
2022年2月
山上 睦実
河添 仁
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