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“Borderline resectable”の概念は切除成績のわるい膵癌においてはじめて導入され,その定義はNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインにて明確に提示されている.膵癌に関するborderline resectableは膵癌と「局所の解剖(膵臓周囲の動脈と静脈との接触・浸潤の程度)」によって定義されている.同カテゴリーの同定は,R1切除を回避するために術前治療の導入などの治療方針の決定に重要であることから普及してきたといえる.この概念は,再発率が同様に高い大腸癌肝転移にも使用されるようになってきた.大腸癌肝転移におけるborderline resectableは,肝転移と肝外転移を同時に有する症例から,切除可能な肝転移のみを有する症例を区別するために提案された.その後,European Society for Medical Oncology(ESMO)ガイドラインではsurgical criteria(easy vs difficulty)とoncological criteria(excellent vs good vs bad)の両面から治療選択を決定することを推奨している.Surgical criteriaがeasyであっても,oncological criteriaでexcellentとなるグループではupfront surgery(+術後補助化学療法)を,good/badとなるグループでは周術期化学療法を推奨している.つまり,大腸癌肝転移に関するborderline resectableは,「局所の解剖」ではなく「大腸癌肝転移が切除可能であるが予後不良であること」を中心に定義されているといえる.肝細胞癌についてはborderline resectableに関する議論が本邦でなされるようになっている.肝癌診療ガイドライン2021年版の治療アルゴリズムにおける「肝切除が推奨されていない4個以上の肝細胞癌」や「肝切除の推奨されている脈管侵襲のある肝細胞癌」といったカテゴリーは,肝細胞癌(HCC)に対するborderline resectableを定義づけるうえで今後必要となってくると考える.
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