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は じ め に
脳性麻痺による側弯症は,神経筋原性側弯症(neuromuscular scoliosis:NMS)のうちの上位ニューロン疾患によるものと分類され,脳性麻痺患者の21~64%には側弯症の合併があると報告されている1).筋力低下や骨脆弱性,股関節脱臼により側弯は進行し,50°を超える弯曲は成長終了後も進行する2).特にgross motor function classification scale(GMFCS)がⅣまたはⅤである重度の麻痺をもつ患児は側弯進行のリスクが高い3, 4).骨盤が傾斜することで坐位の維持が困難となり,さらに高度に進行すると胸郭の変形が生じることで呼吸障害をきたす.たとえ胸椎部の変形が軽度であり腰椎部の変形のみであったとしても,腹腔内容積が低下し横隔膜が押し上げられることで呼吸障害が出てしまう.脳性麻痺患者の側弯症の治療の主目的は,こうした生命予後にかかわる呼吸障害を予防することにある5).
脳性麻痺の側弯症の治療としては,装具による保存療法,ボトックス注射,筋解離術などがあげられるが6,7),呼吸障害による死亡を防ぐには手術がもっとも有効な治療であるとされる5).しかし,脳性麻痺患者の側弯症手術は周術期の合併症発生率が高く,出血傾向や神経合併症,栄養不良に伴う低アルブミン(Alb)血症や貧血,創部感染・尿路感染などの感染症に加え,無気肺・肺炎などの呼吸器合併症,麻痺性イレウスや上腸間膜動脈(SMA)症候群などの消化器系合併症,骨脆弱性に伴う術後インプラントトラブルなど,通常の脊椎手術よりも気をつけるべき合併症が数多くあげられる8).もともとの患児の身体的脆弱性から致命的な合併症が起こってしまう可能性もあり,できる限りの予防策を講じる必要がある.
当科では2014年から60例を超える脳性麻痺患者の側弯症手術を行っており,本稿では,当科での周術期管理の工夫について述べる.

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