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は じ め に
四肢発生の悪性骨・軟部腫瘍手術では,切除縁を確保した広範切除により骨欠損が生じることがある.特に長管骨における広範な骨欠損に対しては,腫瘍用人工関節置換,または他家骨や自家骨による生物学的再建が用いられてきた.腫瘍用人工関節置換後の問題点としては,インプラント感染,無菌性の弛み,部品の破損など短期から長期にわたる懸念がある.術者は画像診断の進歩により詳細な手術計画が可能となり,隣接関節を温存できる症例を選択できるようになった.悪性骨・軟部腫瘍患者の生命予後の改善に伴い,若年者では生物学的再建による長期的な耐用性が期待される.海外では生物学的再建として,他家骨移植を用いることが一般的である.しかし,わが国では文化的な背景や病原体の感染リスクに対する懸念のため,同種骨バンクの整備はすすんでいない.そのかわり他家骨の代替として,加温処理骨,液体窒素処理骨,照射処理骨といった,切除骨を再利用する自家骨移植が開発され広く用いられてきた.
自家処理骨の利点は,欠損部に対して解剖学的に形状が合致することである.われわれは,悪性骨・軟部腫瘍に対する広範切除により骨欠損が生じた症例に対して,自家加温処理骨による骨性再建を実施してきた.過去の基礎研究において,骨内の腫瘍細胞は70°C10分の加温により骨誘導能を一部温存しつつ腫瘍細胞を死滅できることが証明されている1,2).本結果に基づき,われわれは臨床では70°C15分間の加温処理を行っている.一方,加温処理骨は血流のないdead boneであり,合併症として,偽関節,骨吸収,感染,骨折の発生に注意を要する.患者の腫瘍学的予後のため,加温処理骨の長期的な治療成績に関する報告は少ない.本研究では,悪性骨・軟部腫瘍切除後の骨性再建における自家加温処理骨の有用性と合併症を含めた長期成績について比較・検討した.
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