発行日 2017年1月20日
Published Date 2017/1/20
DOI https://doi.org/10.15106/J03022.2017115959
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40代女。終末期の膵体部がんで、疼痛マネジメント目的で緊急入院となった。化学療法の適応はなく、夫からは患者への病状説明を拒否する発言が聞かれた。患者本人からは「とくに思っていることはない」等の発言がきかれ、スタッフは真意を図りかねていた。患者・家族・医療者で共通目標を設定できずにいたため、Jonsenらの症例検討の枠組みを用いて倫理的検討を行った。その結果、夫の意向が反映され、患者の意向が不在のまま医療が行われていることで自立尊重の原則が脅かされているのではないかと考えられた。看護目標を患者・家族にとってよりより選択ができることとし、患者の思いを傾聴し、患者にとって大切なことを夫と共有することとした。患者に医師との面談希望を問うたところ希望したため、病状説明・緩和医療中心の治療となることを伝えた。なお、面談した臨床心理士から、患者は"家族の中で一人の時間を持つこと=自分らしさ"と考える人であり、優先すべき看護ケアであったのではないかと考えられた。
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