発行日 2005年3月20日
Published Date 2005/3/20
DOI https://doi.org/10.15106/J03022.2005116821
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難治がんに対する臨床試験と看護倫理について,脳腫瘍(悪性グリオーマ)で初回遺伝子治療を受けた31歳の女性患者に対する看護の体験を通して考察した.既存の治療法では治癒を望めない難治がんにおいて,患者は新しい治療法に自分の命を賭け,その臨床試験に対する患者と家族の期待は高まる.したがって,医師は臨床試験について慎重に説明し,看護師は説明場面に同席して,患者・家族の擁護者としての役割を担うことが必要である.初回治療例では,効果や副作用に関する経験的なデータがなく,その時々における患者の身体的・精神的状態によって治療の方向性が検討されていく.臨床試験で狙う効果を達成するために,患者に著しい苦痛が生じる場合,治療継続に対する患者の意思決定上の葛藤は深刻である.看護師は患者の身体的苦痛が最小限になるように緩和し,患者が真に望むことに傾聴して共感的理解のもとに患者の意思決定を支えることが重要である
©Nankodo Co., Ltd., 2005