発行日 2015年5月1日
Published Date 2015/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2015265085
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症例は79歳女性で、慢性甲状腺炎、突発性難聴、鉄欠乏性貧血、高血圧症、脂質異常症(IIa)の既往があり、78歳からレボチロキシンを内服した。熱中症疑いで救急外来受診時に貧血、低ナトリウム(Na)血症を指摘さ、貧血に鉄剤を経静脈投与し塩分摂取指導を受けた。低Na血症の指導はなく、高血圧にテモカプリル、脂質異常症にロスバスタチンを開始した。ふらついて転倒し、頭皮裂傷受傷、出血性ショックをきたし入院した。著明な低Na血症を認め、縫合、ドパミン投与、輸血、リンゲル液補液の治療で全身状態改善し、血液検査でNa 133mEq/Lに上昇し退院した。気分不良、ふらつきを生じ著明な低Na血症を認め再入院した。ADHの相対的高値とレニン-アルドステロン系の軽度低下を認め、鉱質コルチコイド反応性低Na血症(MRHE)を疑ったが2日間の補液のみでNaが上昇した。MRHEを疑いフルドロコルチゾンを投与したがK低下、軽度血圧上昇傾向を認め、スピロノラクトンを併用し退院した。ふらつき、著明な低Na血症を認め再入院した。血漿浸透圧低値、高張尿、尿中Na濃度高値、腎機能正常、血中コルチゾール正常範囲内でMRHEと矛盾しなかった。感冒罹患後、高熱出現後、Naが著減し、下垂体-副腎系異常を疑い下垂体MRIを行い嚢胞化した下垂体腺腫が疑われた。IGF-1低値についてアルギニン試験、グルカゴン負荷試験、GHRP-2負荷試験、いずれも重症成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)の基準を満たし、MRHE+重症AGHD+LH/FSH分泌不全症+慢性甲状腺炎と診断し、GH補充療法を勧めたが同意が得られずフルドロコルチゾン増量に留めた。
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