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Ⅰ.はじめに
終末期の生存期間を予測する指標を用いることによって,医療従事者はがん患者の予後を把握し,有効なケアを行うことが可能になる1)2).また,患者と家族は残された時間の有効利用ならびに死の準備を行うことができる3).そのため,1980年代の後半にスコアリングシステムからなる終末期がん患者用予後予測指標が開発され,各国で検証されてきた.しかし,既存の予後予測指標は,構成項目として採血を要する項目や医療従事者の直観に基づく項目を含んでいるだけでなく,陰性的中率が低いことが指摘されている3)4).そこで,終末期患者に対して侵襲がなく,正確で簡便に使用できる予後予測指標の開発が不可欠と考える.
終末期在宅療養時期は大別して在宅療養開始時,平均3〜4カ月の安定期,最期の7〜10日間,最期の約3日間に分けられる.これらの各時期に応じて患者やその家族に関わっていくことが医療従事者には求められる5)6).特に,医療行為によって症状を軽減することが難しい最期の約1週間には,医療従事者が家族に対して意識的に介入することが重要である7).そして,家族が臨終の場を患者の側で過ごせるようなケアが必要である.これらのケアは,患者の療養の場所に関係なく医療従事者に求められる.
看護師も,患者と家族の生活の質を高めるケアを提供するうえで主体的に予後を予測することが必要不可欠であると考える.Glaserら8)も,看護師が予後を予測することによって患者や家族との関係性やケアの方向性などに影響を及ぼすことから,看護師の予後予測の必要性を指摘している.近年,看護師の視点から予後予測項目が明らかにされつつある9)10).山田ら10)は,看護師が患者の予後を推定する際の症状とその期間について検討し,ある看護師が予後予測項目として適切だと考えた症状や徴候を,ほかの看護師は適切ではないと考えたり,特定の症状や徴候から予測した予後が異なることを報告している.
現在,最期の10日と3日を正確に判断する指標は確立されていないので,まず指標の構成項目を明らかにすることが課題であると考える.そこで本研究では,看護師が終末期肺・胃・直腸結腸がん患者の予後10日と3日を予測するうえで有用な項目(症状や徴候)を明らかにすることを目的とした.その際,血液検査などの身体侵襲を伴う処置を必要としない項目を抽出した.
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