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Ⅰ.はじめに
乳がんは,罹患数,死亡数とも年々増加を続け,その治療方法も大きく変化している疾患である.乳がんの治療は乳房の喪失や変形などボディイメージを伴うため,患者自身が治療方法を選択する機会が多くみられる.乳がん患者の意思決定は,術式選択のみならず,乳房温存の可能性が広がる術前化学療法の選択や治験参加の選択,乳房再建術の選択など選択肢の幅が広がり,その選択は複雑かつ困難になってきている.乳房は女性を価値付ける重要なものであり,個人の価値観が反映される部分が大きいため,患者自身が決定していく必要性が高いといえる1).また,患者が納得できる選択をすることは,病気の受容を促進し,自己を取り巻く状況の変化に正しく対処することが可能となる2).しかし,患者が治療方法を選択することは困難である3)〜5)ため,意思決定を行っていく患者への支援は看護師にとって重要な役割であるといえる.
がん患者の治療に対する意思決定については,意思決定プロセス6)〜8)や影響要因9)〜13),情報提供14)や治療選択への参加15)16),看護援助17)18)などの調査研究がすすめられている.がん患者の意思決定要因に関する研究12)13)では,ソーシャル・サポートが要因の一つに挙げられ,患者を取り巻く療養環境のメンバーから受けた支援を報告している.また,乳がん患者の治療の意思決定については,自己責任を伴う意思決定はストレスが強く患者は困難な状況にある3)〜5)こと,術式選択における周囲からの影響9)〜11)が報告されており,適切な情報提供や精神的支援の重要性が指摘されている18)19).人間関係の相互作用における支援であるソーシャル・サポートに関する研究では,ソーシャル・サポートが不安や生活満足度など心理面に影響を与えるといったサポートの有効性20)やサポート源による効果の違い20)〜22),サポートの相互作用20)22),サポートのプラス面とマイナス面22)23)に関する報告がされている.
しかし,乳がん患者の治療選択に関する研究では,周囲のサポートに焦点を当てた研究は少なく,意思決定プロセスに影響する周囲の一部分への焦点化であること,さらに,retrospective designで面接調査を行っていることや治療選択が不可能な対象者が含まれていることなどの課題が残されている.乳がん患者が治療に対する意思決定を行っていく間に周囲のサポートがどのように影響しているかの実態はまだ明らかにされておらず,周囲のサポート役割の違いや患者自身が周囲のサポート役割をどのように捉えているかの報告はみられない.
そこで,本研究は乳がん患者が,初期治療を選択するまでに周囲からどのようなサポートを受けているのか明らかにすることを目的とした.
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