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Ⅰ.はじめに
わが国における乳がんによる死亡率は,21世紀の現在において1960年代の約3倍を占める1)に至っており,その基盤となる乳がん罹患者数は年々増加2)3)の一途をたどっている.乳がんの基本的治療は手術療法4)が中心であり,わが国では根治手術の一環として腋窩リンパ節郭清術(以下,リンパ郭清術)が標準適用されてきた.
“生活の質”・“生命の質”と訳されるQuality of Life(以下,QOL)は,思想・医療・看護の分野に浸透して久しい.近年は患者のQOL向上支援の観点から縮小化した術式が普及し,リンパ郭清術も最小限にとどまりつつある4)〜6)が,リンパ郭清術後遺症である患側上肢リンパ浮腫を訴える患者はいまだ認められる.
乳がん術後に生じるリンパ浮腫は,発症原因が未確定であることから有効な治療手段が確立7)〜9)されておらず,正確な発症率も不明9)である.上肢リンパ浮腫患者の年間発生推測例は3,750〜5,000例,現在の患者数は3〜5万人10)ともいわれている.リンパ浮腫は,放置しても生命に関わる事態には直結しないものの,上肢から胸部にかけてのリンパ浮腫がもたらす運動障害によって日常生活や社会活動の制限がもたらされる.さらに,前述のように治療法が未確立なために永続的管理が必要となることから,患者の不安は増大している.こうした状態に対し患者は,日常生活上の安楽性の追求と精神的苦痛を回避するために,リンパ浮腫の予防を目的としてさまざまな方策を試みている.
このようなリンパ浮腫患者に対して,リンパ浮腫の予防および軽減により,患者の生活過程を整え自立を支援しQOLを高めることが,看護師が取り組むべき重要な課題の一つ8)であるが,わが国においてリンパ浮腫患者のQOL評価を行ったものはいまだない.そこで本研究では,乳がん術後リンパ浮腫患者のQOLを明らかにすることで,乳がん術後リンパ浮腫患者への看護ケアの必要性について検討することを目的とした.
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